秋田地方裁判所 昭和55年(ワ)328号 判決 1984年8月28日
原告
佐藤靖子
ほか二名
被告
久八建設株式会社
ほか四名
主文
一 被告荻原榮、同保坂久、同有限会社丸善組は、各自、原告佐藤靖子に対し金一八七万五一一七円及び内金四七万五一一七円に対する昭和五五年二月二七日以降完済まで年五分の割合による金員、原告佐藤真由美、同佐藤正子に対し各金六五〇万四六五九円及びこれらに対する昭和五五年二月二七日以降各完済に至るまで年五分の割合による金員を、支払え。
二 原告らの被告荻原榮、同保坂久、同有限会社丸善組に対するその余の請求並びに被告久八建設株式会社、同株式会社佐幸組に対する各請求を棄却する。
三 訴訟費用中、原告らと被告久八建設株式会社、同株式会社佐幸組との間に生じた分は原告らの負担とし、原告らと被告荻原榮、同保坂久、同有限会社丸善組との間に生じた分は、それぞれこれを二分し、各一を右被告ら、その余を原告らの負担とする。
四 この判決の第一項は仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 原告ら
1 被告らは各自、原告佐藤靖子に対して金二〇七万五一一七円及び内金四七万五一一七円に対する昭和五五年二月二七日以降完済まで年五分の割合による金員、原告佐藤真由美、同佐藤正子に対し各金七七九万三九一八円及びこれに対する昭和五五年二月二七日以降完済まで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 仮執行宣言
二 被告ら
1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 事故の発生
訴外亡佐藤正一は、昭和五五年二月二七日午後三時三〇分ころ、秋田市上北手古野字脇ノ田地内で施行されていた昭和五四年度災害復旧(ため池)工事に従事中、被告保坂運転の大型特殊自動車(ニツコウBH四五L、バツクホー、以下本件自動車という)のバケツトと下水管の間に頭を狭まれ、頭蓋骨々折等の傷害を受け、同日午後九時三〇分ころ死亡した。
2 責任原因
(一) 本件工事は、被告久八建設株式会社(以下被告久八建設という)が秋田市から請負い、被告株式会社佐幸組(以下被告佐幸組という)、被告有限会社丸善組(以下丸善組被告という)、被告荻原榮へと順次下請に廻されたものであり、亡正一は被告保坂と共に被告荻原に雇われ、本件工事に従事していたものである。
(二) 被告保坂の責任
被告保坂は、前後左右の安全を確認して本件自動車を操作する義務があるにもかかわらず、これを怠り漫然と本件自動車のバケツトを回転させ本件事故を惹起した。よつて、同被告には民法七〇九条の責任がある。
(三) 被告丸善組の責任
被告丸善組は、本件自動車を所有し、自己のために運行の用に供していたものである。よつて、同被告は右運行により生じた損害を賠償する自動車損害賠償保障法(以下自賠法という)三条の責任がある。
(四) 被告荻原の責任
本件事故は、被告荻原の被傭者である被告保坂の過失行為によるものであるから、被告荻原には民法七一五条の責任がある。
又被告荻原は、亡正一の使用者として、同人の生命・健康を保護し安全を保証すべき義務があつたにもかかわらず、これを怠り、本件自動車のバケツトと下水管の止めパイプとをチエーン及びワイヤーで結びバケツトを引き上げて止めパイプを引き抜くという主たる用途とは全く異なる用途に本件自動車を使用し(労働安全衛生規則一六四条違反)、更にバケツトに接触するおそれのある危険個所に亡正一を立入らせ(前同一五八条違反)、本件事故を発生させたのであるから、民法四一五条による責任がある。
(五) 被告久八建設、同佐幸組の責任
亡正一と被告保坂は、被告久八建設、同佐幸組が支配管理する施設内において、右被告らの指揮監督のもとにそれぞれ労務を提供していたものであり、右被告らは、使用者と同視しうる関係にあつた。よつて、右被告らは、(四)記載と同一の責任がある。
3 損害
(一) 亡正一の逸失利益 金三一七六万三五〇八円
亡正一は死亡当時四一歳の男子でその年収は金三一五万六六〇〇円(昭和五四年賃金センサス第一巻第一表産業計企業規模計男子労働者学歴計年齢計の年収額)を下らなかつた。亡正一は、今後六七歳までの二六年間同額の年収をあげられるところ、生活費を三〇パーセント控除して、年別ライプニツツ方式による年五分の割合による中間利息を控除(係数一四・三七五一)して現価を算出すると金三一七六万三五〇八円となる。
原告真由美、同正子は亡正一の子であり、原告靖子は妻である。よつて、原告らは、右逸失利益の損害賠償請求権を各三分の一宛、各金一〇五八万七八三六円相続した。
(二) 原告らの慰藉料 原告らに対して各金五〇〇万円
(三) 葬儀費用 原告靖子につき金六〇万円
(四) 損益相殺
原告靖子は、亡正一の死亡につき、労働者災害補償保険法に基づき、昭和五五年五月二三日遺族特別支給金として金二三七万二三〇〇円、同年三月から昭和五九年五月一日まで遺族補償年金として合計金五二四万六五〇一円の給付を受けたので、これを同原告の前記相続債権額から差引きし、更に後記被告らからの弁済金を差引く。
(五) 弁護士費用 原告靖子につき金一六〇万円
4 結論
よつて、被告ら各自に対し、右損害金の内金として、原告靖子は金二〇七万五一一七円及び弁護士費用を除いた内金四七万五一一七円に対する昭和五五年二月二七日以降支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金、原告真由美、同正子はそれぞれ金七七九万三九一八円及びこれに対する昭和五五年二月二七日以降支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
二 請求原因に対する答弁
(被告久八建設、同佐幸組、同荻原、同保坂)
1 請求原因1は認める。
2 同2の(一)は認める。同(二)、(四)、(五)はいずれも否認する。
本件事故は、下水管の端の部分に亡正一が飛び込むように走つてきて発生したものであり、亡正一の一方的な過失である。
3 同3の(一)ないし(三)、(五)は争う。但し、同(一)の内、原告らと亡正一の身分関係は認め、(四)は認める。
(被告丸善組)
1 請求原因1は認める。
2 同2の(二)は否認する。
3 同3の(一)ないし(三)、(五)は争う。但し、(一)の内、原告らと亡正一の身分関係は認め、(四)の内遺族特別支給金の支給を受けたことは認める。
三 抗弁
1 (被告丸善組)本件事故は、亡正一の一方的過失によるものであり、仮に被告保坂にも過失があつたとしても亡正一の過失割合は五割をはるかに超えるものである。
2 (被告久八建設、同佐幸組、同荻原、同保坂)原告らに対し、本件事故による損害賠償として、被告久八建設は金一〇二万円、被告荻原は金八万円、被告保坂は金八万円を支払つた。
四 抗弁に対する原告らの答弁
1 抗弁1は争う。
2 抗弁2の事実は認める。
第三証拠
当事者双方の立証は、本件記録中の書証、人証等目録記載のとおりであるからこれを引用する。
理由
一 請求原因1の事実(本件事故の発生)は、当事者間に争いがない。
その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第七、第八号証(原告らと被告丸善組を除くその余の被告らの間では成立に争いはない)、証人外石正弘の証言、被告保坂本人尋問の結果によると、次の事実が認められる。
本件事故現場は、災害で損壊されたかんがい用ため池の堤防、取水口の修復のための工事現場で、事故は堤防に取付けられた取水栓で取水したかんがい用水を通すため、取水桝と吐水桝を設置し、取水桝と吐水桝の間約一五メートルを内径六〇センチメートル、外径六〇センチメートルのコンクリート製ヒユーム管で連結する工事中に発生した。
現場の東側は五メートル幅の平地となつており、西側山際に沿つてヒユーム管埋設のため、南北に長さ約二〇メートルにわたつて、下幅約一・五メートル、上幅約三メートル、深さ約一メートルに掘削されているが、事故当時迄に取水桝から南方吐水桝に向つて約一四メートルの間はヒユーム管が布設されており、その底部にはコンクリートが流し込まれ、ヒユーム管の回りにはヒユーム管固定のための型枠が組まれていたが、底部には水が溜つていた。
亡正一らは、右ヒユーム管の南側吐水管との間に長さ約一・四メートルのヒユーム管を接続する作業にかかるため、既設ヒユーム管の滑り止めとしてヒユーム管南端の断面に接して打ち込まれていた直径五センチメートル、長さ四メートル(水面上は約二・七メートル)の鉄パイプを引抜く作業にとりかかつた。
被告荻原の監督のもとに、その従業員である亡正一、被告保坂、訴外外石正弘らが右作業にあたつたが、同人らは、パイプに鎖をまきつけ、これを本件自動車のバケツトに取付けてあるフツクにかけて引き抜くこととし、被告保坂が工事場所の東側の平地上にヒユーム管の南端付近の位置にヒユーム管とほぼ平行に約三・八メートルの距離に北向きにおかれた本件自動車を運転操作することとなり、最初は、亡正一がヒユーム管上に立ち、パイプに鎖を巻きつけ、フツクに鎖をかけたが、巻き方が悪く、鎖が外れてしまつた。
そこで、被告保坂は、一旦バケツトを左方向に旋回させて鎖をフツクから外し、今度は外石に鎖を巻きつけるよう指示した。そこで、外石が亡正一と交替し、ヒユーム管の上に立つて鎖を巻きつけたので、被告保坂は再度本件自動車を操作し、バケツトを徐々に下げながらパイプに寄せたところ、ヒユーム管の南端西側付近に亡正一が頭を下げた低い姿勢をとつて居たため、亡正一の頭がバケツトとヒユーム管の間にはさまれ、本件事故に至つた。
亡正一が、ヒユーム管の南端近くにいてかかる姿勢をとつていた理由は、判然としないが、前後の状況から推測すると、亡正一は先に鎖が外れたため、今度はうまく行くよう何らかの手段を講ずべく、同所付近にいたと推認される。
ところで、本件自動車は、ヒユーム管の設置される溝から一メートル高い平地上に置かれており、更に九〇センチメートルのキヤタピラ高の上に椅子式運転席があるため、全高二、三メートル近くの位置にあり、溝と本件自動車間に約五〇センチメートル程土が積まれていたものの、運転席からヒユーム管上方の見通しは可能であつた。しかしながら、運転席がバケツトの付いたアームの左側にあり、バケツトを旋回させヒユーム管に近づけると、ヒユーム管付近の下部は見えにくい状況にあり、事故直前の見通しは不良であつた。
しかるに、被告保坂は、安全を確認することなく、漫然本件自動車を操作し、本件事故を惹起した。
なお、外石はヒユーム管の南端近くにおり、又、被告荻原はヒユーム管上その南端から約四・五メートルの辺りにいて、亡正一が危険な個所にいることを知り得た筈であるが、両名共作業の方に気をとられ、亡正一の動静に気付かなかつた。
以上の事実が認められ、右に反する証拠はない。
二 被告らの責任について
1 被告丸善組を除くその余の被告らと原告らとの間では、請求原因2の(一)の事実は争いがない。
2 被告保坂の責任について
前記認定の本件事故の状況によると、被告保坂は、本件自動車を運転操作するに際しては、パイプ付近に人がいないか確認し、いれば離れるよう注意を促し、又、パイプ付近が見えにくいときは、被告荻原ないし外石をして、安全を確認させ、人を遠ざける等して、事故を防止する義務があつたところ、同被告はこれを怠り漫然と運転操作し本件事故を惹起したと認められるから、民法七〇九条の責任があることは明らかである。
3 被告荻原の責任
前記1、2によれば民法四一五条の責任を云々するまでもなく、被告荻原に民法七一五条一項本文の責任があることは明らかである。
4 被告久八建設、同佐幸組の責任
原告らは、被告保坂及び亡正一が被告久八建設、同佐幸組の支配管理する施設内で同被告らの指揮のもとに労務を提供しており、被告保坂及び亡正一と右被告ら間には使用者と同視すべき関係があつたと主張するところ、証人外石正弘の証言と被告保坂本人尋問の結果によると、被告久八建設は二、三日に一回程度担当者が現場の見廻りをし、被告佐幸組は鈴木某が毎日現場に出向いて仕事の段取り、監督をしていたことが認められるが、右被告らが、本件工事の元請であることから被告荻原に対してなす作業指示以上に、直接被告保坂及び亡正一に対して指揮命令したこと迄の事実はこれを認めるに足る証拠はなく、他に右被告らを使用者と同視するのを相当とする事実はこれを認めることができない。よつて、本件事故につき、被告久八建設、同佐幸組に責任はない。
5 被告丸善組の責任について
前掲各証拠に弁論の全趣旨を総合すると、本件自動車が道路運送車両法二条二項の自動車であることは明らかであり、自賠法三条にいう自動車に該当することはいうまでもない。
ところで、本件自動車は地面の掘削及び土砂の運搬、積込、矢板の打ち込みを主たる用途とするものであるが、被告保坂の本人尋問の結果によれば、バケツトにフツクを取付けることにより牽引操作をも可能とする装置をも整備しており、右操作中に本件事故が発生したこと前記認定のとおりであるから、「自動車を当該装置の用い方に従つて」用いたものということができる。
前掲甲第七、第八号証に弁論の全趣旨を総合すると、本件自動車は被告丸善組の所有にかかるものであり、被告丸善組が本件工事のため被告荻原に貸与していたものと認められ、被告丸善組は、本件自動車に対する運行を支配していたものといえる。
従つて、被告丸善組は、本件自動車の運行供用者として自賠法三条の責任がある。
被告丸善組は、同法三条但書の事由を主張・立証しない以上、右責任を免かれないが、前記のとおり、運転者である被告保坂に過失が認められるから、責任を免かれることはできない。
三 亡正一の過失について
前記認定の本件事故の状況に鑑みると、亡正一自身本件事故の直前に、パイプ引抜きのため同じ作業に従事していたのであるから、外石がパイプに鎖を巻きつけたからには、バケツトが接近することは十分に予知しえたものである。よつて、パイプの近くに居るについては十分に本件自動車のバケツトの動静に注意し、自らの安全を守るべき注意義務があり、これを怠つた点において、亡正一の不注意も本件事故の原因となつたといわざるを得ない。
もつとも、本来、被告荻原がなすべき作業指示、安全確認が適切になされず、見通しの不十分な被告保坂の判断に任せたこと、被告保坂も安全を確認することなく危険な操作をしたこと、これら被告荻原、同保坂の過失が本件事故の主たる原因であることは明らかであり、右被告らの過失と亡正一の過失割合は六対四とするのを相当と認める。
四 損害
1 亡正一の逸失利益について
成立に争いのない甲第一号証、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したと認められるから真正な公文書と認められる甲第九号証に原告靖子本人尋問の結果を総合すると、亡正一は、昭和一四年一月一日生れ、当時四一歳の健康な男子として、大工として、金八〇〇〇円を下らない日給を得ていたが、冬期間は仕事がなく、本件工事のような土木工事に雇われ従事していたこと、同人の平均賃金につき労災保険では日給金六二〇五円と認定されており、その年収は金二二六万四八二五円を下らなかつたこと、亡正一は、右収入をもつて原告らの妻子との生計を維持しており、本件事故に遇わなければ、満六七歳までの二六年間右年収を下らない収入を挙げ得たものと認められる。そこで、亡正一の逸失利益の本件事故時の現価を、生活費割合三〇パーセントを控除したうえ、ライプニツツ方式により年五分の割合による中間利息を控除して(係数一四・三七五一)算出すると、金二二七八万九九六〇円(円未満切捨て)となる。
前記亡正一の過失を考慮すると、被告荻原、同保坂、同丸善組において賠償すべき損害は、右金額の六〇パーセントにあたる金一三六七万三九七六円(円未満切捨て)となる。
原告らと亡正一の身分関係につき当事者間に争いがなく、右によれば、原告らは、昭和五五年法律第五一号の改正前の民法九〇〇条により、右損害賠償請求権の各三分の一にあたる金四五五万七九九二円(円未満切捨て)を相続したこととなる。
2 葬儀費用について
原告靖子本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したと認められる甲第四号証の一ないし二三によると、原告靖子は亡正一の葬儀費用として金六〇万円を下らない出費をしていたことが認められるところ、前記亡正一の過失を考慮し、内金三六万円を被告らにおいて賠償する義務があるものと認める。
3 労災保険金による損益相殺
原告靖子に対し、労災保険法に基づく遺族特別支給金として金二三七万二三〇〇円、遺族年金として昭和五九年五月一日までに合計金五二四万六五〇一円が支給されていることは、原告靖子と被告荻原、同保坂との間では争いがなく、原告靖子と被告丸善組との間では、遺族特別支給金の支払いを受けたことについては当事者間に争いがなく、遺族年金の支給を受けたことは調査嘱託の結果と弁論の全趣旨を総合してこれを認める。
ところで、前掲甲第九号証によると右遺族特別支給金二三七万二三〇〇円の内金三七万二三〇〇円の葬祭料等を除く金二〇〇万円は特別支給金であり労働福祉事業の一環として支給されるものであり、損害の填補を目的とするものではないから、右支給は、原告靖子の損害に影響を及ぼさないと解するのが相当であるが、右葬祭料等金三七万二三〇〇円と労災年金五二四万六五〇一円については、右支給を受けたことにより実質原告靖子の損害は回復されたものと認められるから、原告靖子の1、2の損害賠償請求権はもはや残存しない。
4 慰藉料について
本件事故の態様、当事者双方の過失の程度等本件に関する一切の事情並びに、本件事故に対する見舞金として被告久八建設から金一〇二万円が原告らに対して支払われていること(原告らと被告久八建設との間では争いがなく、原告靖子本人尋問の結果により原告らと被告丸善組との間でも認められる)、前記3のとおり、原告靖子に対し損害額をこえて労災保険給付がなされていること、以上を考慮すると、原告らの精神的苦痛に対する慰藉料としては、原告靖子に対しては金一五〇万円、原告真由美、同正子に対しては各金二〇〇万円をもつて相当と認める。
5 一部弁済について
原告らに対し、被告荻原、同保坂が損害賠償金として各金八万円を支払つたことは、右当事者間において争いはなく、原告らと被告丸善組との間でも原告佐藤靖子本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。
そして、右金員は、原告らにおいて各三分の一の金五万三三三三円(原告靖子は金五万三三三四円とする)宛各損害に充当されたものと解する。
6 弁護士費用
以上によれば、弁護士費用を除いた原告らの被告荻原、同保坂、同丸善組に対する損害賠償請求権は、原告靖子については、4から5を差引いた金一四四万六六六六円であるから、その範囲内である同原告の本訴請求は全て理由があり、原告真由美、同正子については1、4の合計金から5を差引いた各金六五〇万四六五九円であり、その限度で理由がある。
右事実に本訴の経過を考慮して、原告靖子が原告代理人に対し支払いを約した弁護費用の内金一四〇万円をもつて、相当因果関係にある損害と認める。
五 結論
以上によると、本訴請求は、被告荻原、同保坂、同丸善組に対し、各自、原告靖子は金一八七万五一一七円及び弁護士費用を除いた内金四七万五一一七円に対し本件事故の日である昭和五五年二月二七日から、原告真由美、同正子は各金六五〇万四六五九円及びこれらに対する前記日時から、各完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから、これを認容し、原告らの右被告らに対するその余の請求と被告久八建設、同佐幸組に対する各請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 野田武明)